unreal arimura you - 非実在有村悠 -

オタク・サブカル系の書評やレビュー、ハウツー記事など。

Re-Sync Cluster access DWDH013/Darwin Records

Re-Sync Cluster

Re-Sync Cluster

(この記事は元々昨年12月5日に書かれたものです)

 今年はaccessデビュー20周年。というわけで、シングル2枚・アルバム1枚・リミックスアルバム1枚と怒涛の連続リリースである(それでも、 本当に矢継ぎ早にリリースしていた94年にくらべると少ないのだけど)。で、今日発売のリミックスアルバム『Re-Sync Cluster』を買いに、朝から川崎へ出た。ラゾーナ川崎のHMVには店頭在庫ありと表示されていたのだけど、全部取り置き分ということだったので、チ タデッラのタワーレコードまで足を伸ばして無事入手。しかし、「大人のJ-POP」なる謎のコーナーに置かれていたのはどういうことか。もはやおっさんホ イホイだとでも?
 そしてさっそくiTunesにインポートしようとしたら、なんとまだGracenoteに情報が登録されていなかった。そこで自ら情報を入力し、 CDDBに登録。これから『Re-Sync Cluster』をiTunesにインポートする人は、ぼくの登録した情報を取得することになる。ちょっと鼻が高い。
 さて、CDは全6曲。うち3曲が浅倉大介自らリミックスを手がけ、3曲はそれぞれ別のアーティストとのコラボ・リミックスになっている。今年のライヴツ アー各会場で限定配布されたCDに収録されていたのが、今回まとめて聴けるわけだ。いやはやありがたい。それではレビュー行くぞ。

  1. Wild Butterfly Digital Ageha re-sync style Remixed by Daisuke Asakura
     のっけから、ダンサブルな四つ打ちダブ・チューンに生まれ変わった「Wild Butterfly」でガツンとやられる。音の強弱が原曲よりもさらにくっきりとしており、強烈なビートを繰りだしてくるリズム隊にはノらずにはいられな い。いいスピーカーで聴くことを強く推奨。
  2. Beyond the Second-D, S’capade Remix Remixed by Shinnosuke [SOUL'd OUT]
     SOUL’d OUTのトラックマスター・Shinnosukeが担当したリミックス。やや音が軽めだが、accessらしさを上手く引き出したハピコア系のサウンドに なっている。原曲を大きく越えて7分近くに及ぶ大作と化しているが、決して単調ではなく、要所要所でブレイクビーツを取り入れたり、多彩な音色のシンセサ ウンドが切りこんできたりして飽きさせない。
  3. Stand By Deep Air re-sync style Remixed by Daisuke Asakura
     大ちゃんのリミックス2曲目。全体的に空間系のエフェクトをかけまくって、アンビエント(あるいはディープ・ハウス?)気味なアレンジになった。他のアレンジャーよりもよっぽど原曲を解体しまくっているのは、師匠である小室哲哉にも通ずるところがある。
  4. Wild Butterfly Digital Spider Remix Remixed by YOW-ROW [GARI]
     エレクトロロックバンド・GARIのYOW-ROWによるドラムンベースアレンジ。原曲からしてそんな感じだったのだけど、それをより推し進めてかなりハードな音色を駆使している。
  5. ChaOs GrAdatioN External Re-Sync Remixed by kensuke ushio [a.k.a agraph]
     テクノユニット・agraphの牛尾憲輔が、HIROのヴォーカルをサンプリングして切り刻みまくり、原曲よりもさらに難解かつカオスなアンビエント・ テクノに仕立てあげてしまった。どこまでも広がっていく音響空間が心地よいが、ともすれば意識を持っていかれそうになる。5分弱だが、リミックスとしては このアルバムでも屈指の出来。
  6. Bet ~追憶のRoulette~ Demon Angel re-sync style Remixed by Daisuke Asakura
     そして最後に真打登場。原曲は少し軽めの音が引っかかっていたが、大ちゃんの手で「Hung Me For The Distance」のリミックスを彷彿とさせるような、分厚いサウンドの高速トランス・チューンに大変身を遂げた。これだよ、こういうのが聴きたかったん だよ! できればもっと長くしてほしかったとも思うけど。トランスは演奏時間が命なので、ある意味。

 以上、駆け足でレビューをお届けした。ちなみにこのアルバム、ものすごく音がいい。マスタリング・エンジニアのYASMAN氏が相変わらずいい仕事をしている。6曲入りで2,000円。Amazonではmp3版も購入できるが、ここはぜひCDの音質で聴いていただきたい。ぼくは以前大ちゃんが twitterでつぶやいていた設定(AIFFエンコーダ・サンプリングレート44,100kHz・16ビット・ステレオ)で、無圧縮で取りこんでいる。 まあ、どうせiPhoneに移すときはaacに圧縮してしまうのだけど、家にいるときはなるべくiTunesで聴くようにする。とまれ、買うべし。

Secret Cluster(初回限定A) access DWDH 008/9/Darwin Records

Secret Cluster(初回限定盤A)

Secret Cluster(初回限定盤A)

 accessと出会ったのは、さていつごろだったか。たぶん2nd Album『ACCESS II』が出て間もないころ、すなわち93年末から94年初頭にかけてだったように思う。ハイトーンでクリアな声を聴かせる、イケメンだけどちょっとサル顔のヴォーカル担当・貴水博之と、シンセサイザーを駆使して高速デジタルビートを繰りだすボブカットの作曲担当・浅倉大介

 まあ、当時中2で、邦楽をアレコレ聴きはじめていたぼくはカッコいいと思ったね。近所のTSUTAYAから借りてきた『ACCESS II』の盤面にある“AXS”のロゴの上に紙を敷いてカッターでなぞり、ダビングしたカセットテープに貼りつけようとしたら見事にCDをダメにしてしまい、弁償するハメになったくらいには(アイタタ)。mp3どころか家庭用パソコンすら普及していなかった時代の話である。
 そんな時代を、彼らは駆け抜けていった。92年末のデビューから95年元旦の“沈黙”まで、およそ3年のあいだにシングル11枚・リミックスシングル4枚・アルバム3枚を次々とリリース。94年後半のシングル三部作では「純粋な感情」をテーマに同性愛ともとれる表現へのアプローチを試み、話題を振りまいた。そんな人気絶頂のさなかに突然“沈黙”に入り、貴水と浅倉はそれぞれソロ活動を開始。浅倉はT.M.Revolutionなどのプロデューサーとして成功を収め、自らも新たなユニット・Icemanの一員として活躍。ぼくが新月お茶の会に入り、ディープな浅倉ファン・月森竜先生の薫陶を受けたのはそんなころだった。

 世紀を超えて01年末、突如活動再開が告知される。そして翌年の再始動以降今日に至るまで、シングル9枚・ミニアルバム1枚・リミックスアルバム1枚・アルバム4枚・ベストアルバム1枚をリリースし、気がついてみれば結成20周年を迎えていた。……というわけで、ようやく今回レビューする7th Album『Secret Cluster』の話になる。

 長年浅倉のミックス・エンジニアを務めたフィル・カッフェルが引退し、浅倉自身がミキシングを手がけるようになって数年経つ。重低音を聴かせるフィルの音作りから、ひとつひとつの音色の粒が立った浅倉のソリッドな音作りに変わったのが大きな変化だろう。そして近年はギターを排除し、純粋なデジタルサウンドとなっている。今回のアルバムは、オープニングのインスト・ナンバー「vibe cluster」からブラック・ミュージックに接近したダンス・チューン「Let Me Go」、トランシーな「f☆R☆E☆e」まで個性的な楽曲が並び、コンセプチュアルな印象はない。

 今年発売された2枚のシングル曲もすべて収録されており、インストを除いたアルバムオリジナル曲は11曲中4曲にすぎない。しかし、“ポップ”を標榜してコンパクトにまとめ、いささか物足りない印象を受けた07年の前作『binary engine』よりは「accessらしさ」が前面に出ている。まあ、あの2人がやればすべてaccessらしいのだけど、本当は。

 アルバムの白眉は、いずれも20周年アンセムナンバーとなる「Beyond the Second-D.」と「20th Sincerely」だろう。前者は「出逢いからの夢を 夢のカタチに」、後者は「これから 未来に揺られて 僕等は 幸せになれる」と綴る。もちろん、ファンへ向けてのメッセージだ。最近のツアーは7公演程度、大きくてもホール規模になってしまったが、まだまだついていこうと根強いファンは思っているはずだ。ぼくだってそう思っている。

 ちなみに初回限定Aの2枚目は、07年から11年までリリースされた全シングル曲を収録している。昨年、東日本大震災後にリリースされた「Share The Love」はやはり名曲だ。

ラブライブ! μ's Best Album Best Live! Collection

ラブライブ!  μ's Best Album Best Live! collection 【Blu-ray Disc付 通常盤】

ラブライブ! μ's Best Album Best Live! collection 【Blu-ray Disc付 通常盤】

 一昨年の春に『電撃G's Magazine』誌上連載企画がスタートし、あれよあれよという間に大量のCDをリリース、初ライヴ、そして今冬のアニメ化へとこぎつけた『ラブライブ!』。9人の女子高生たちが、母校を廃校の危機から救うべくスクールアイドルとなり、学校の魅力をアピールするという内容なのだが、まあどこからこんなに金が出ているんだと思うほどアニメーションPVのクオリティが高い。聞くところでは、1曲あたり約4~5分のアニメーションに30分クラスの予算がつぎ込まれているのだとか。2D作画と3DCGを違和感なく組み合わせて、動きまくるもんなあ。

 で、そんな9人がこれまでにリリースしてきた大量のマキシシングルをCD2枚組に詰め込んだのがこのベストアルバムである。個人的に、単にシングルをリリース順に詰め込んだだけで「ベストアルバム」と称する商法は好きではないのだが(多少はアルバム曲とかからもセレクションしろよ。まあこの場合アルバムが存在しないのでしかたがないが)、いちいち十数枚買う手間が省けたのでよしとしよう。

 前述のとおり。基本的にリリース順となっている。すなわち、μ's(つまり9人全員)全体のシングル→3つのユニットのシングル→再びμ'sのシングル→デュオ・トリオ曲→ラジオ番組からのスピンオフシングル。これで計31曲。よくもまあ、次々とリリースしたものだ。

 曲調はかなりヴァラエティに富んでいる。基本的に最近の流行を反映してか、(幾分保守的なアイドルマスターなどに比べて)テクノポップ調の曲が多い。たまにサルサ風の曲や、70・80年代アイドル歌謡のパロディのようなものを取り入れてみたり。ちなみに作詞はすべて畑亜貴が担当。どんだけ仕事すりゃあ気が済むんだこの人は。

 歌の巧拙はまあ、十人十色(九人九色?)である。もともと歌手をやっていた西木野真姫役のPileなどはガチで上手い。園田海未役の三森すずこや、絢瀬絵里役の南條愛乃もかなり上手いほう。逆に南ことり役の内田彩や東條希役の楠田亜衣奈あたりは……まあ、可愛さで売っていくということで(婉曲表現)。で、それぞれの役どころや声質、上手さに合わせてユニット曲やデュオ曲・ソロ曲も作られている手の込みよう。まあ、オトナな魅力で押していくと思われるBiBiになぜかにこにー、もとい矢澤にこが入っているのはちと解せぬが。

 ちなみに1月3日、新年早々彼女たちのライヴを取材する機会があった。あいにくプレス席が立ち見で、観客にさえぎられてステージもバックスクリーンもろくに見えず難儀したのだが、熱気は十分に伝わってきた。南條だけ欠席だったのでその分を星空凛役の飯田里穂と小泉花陽役の久保ユリカが必死でカヴァーし、終演後のトークでは安心したのか飯田が泣き出してしまったり。ああいうところを見せられると、アイドルとファンの一体感というか、応援したくなるのもわかろうというものだ。

 で、6日からはいよいよアニメの放送が始まった。期待にたがわぬクオリティーで大満足である。これからもOP・EDシングルや挿入歌のシングルをえげつないほど出していくもようで、いったいどれだけファンから搾取するのやら、戦々恐々である。つまりぼくもすでにファンになってしまっているということなのだけど。こんなアルバムをわざわざ買ったくらいだし。

ぜんぶ彼女に「視」られてる? 淺沼広太/ファミ通文庫

ぜんぶ彼女に「視」られてる? (ファミ通文庫)

ぜんぶ彼女に「視」られてる? (ファミ通文庫)

 京極夏彦百鬼夜行シリーズに、榎木津礼二郎という探偵が登場する。この人物、人や物の記憶が“見える”という超能力の持ち主で、それによってたちどころに事件の真相を暴いてしまうのだが、いかんせん言動が奇矯なため、シリーズの主役である作家・関口巽などには突拍子もない印象しか与えない。シリーズ第1作にして京極のデビュー作である『姑獲鳥の夏』は、関口が聞きつけた18ヶ月ものあいだ身ごもったままの妊婦の噂と、密室から消えた彼女の夫を探してほしいという榎木津のもとへ持ちこまれた依頼が奇妙に絡まりあい、やがて関口の暗い過去も明らかになってゆく――という筋書きだった。

 これらを萌え系ライトノベルに置き換えたらどうなるか? この小説ができてしまった。

 冒頭、いきなり主人公が自分の名前も思い出せない状態で女の子にのしかかられているところから話が始まる。八神花梨と名乗った女の子の、どうにもまわりくどい言動によって少しずつ主人公・後藤智一の記憶は回復されていくのだが、その過程で花梨の特殊な能力が明らかになる。彼女は「人や物の記憶が“視える”」(あらすじより)のだ――って、それなんて榎木津だよ! 彼女の能力に興味を示したお嬢様・七尾奈緒は、智一や幼なじみの百道悠太を強引に巻き込んで超常能力研究部を設立。花梨の能力を少しずつ確かめていく。そのあたりはまあ、最近流行の部活モノのノリだが、物語最大の謎として最後まで立ちはだかるのは、智一は何故冒頭のようなシチュエーションに陥ったのか? ということなのだ。それには彼が心の奥底にしまいこんだ、過去の出来事が関係していた……って、それなんて『姑獲鳥の夏』だよ!!

 たまたま直前に『姑獲鳥の夏』を再読し、ついでに『魍魎の匣』も読破していたこともあって、もうゲラゲラ笑いながら読んだ。タチの悪い読者だな我ながら。いや、でも、これだけ要素が被っていたらさすがに突っ込まざるを得ない。そして、なるほど色々と設定を置き換えたらこういう話とキャラに作り変えられるのかと感心した。花梨可愛いです。言語能力がかなり残念だったりするあたりも含めて。主要登場人物は6人程度とコンパクトな構成だが、安易な台詞回しの記号化を行うことなくしっかりとキャラを立たせており、端正な文体とあいまってたいへん読みやすい。いくつかのレーベルにまたがって複数のシリーズを手がけてきたベテラン作家だけあって、筆力は確かだ。

 昔、登場人物に明示的なトラウマを設定し、それを回復することによって物語を組み立てるというモデルを何度か批判したことがある。今思うとどうしてあれほど嫌っていたのか不思議だが、この作品のようにトラウマそのものを最後までブラックボックス化しておくと、あまり抵抗なく受け入れられる(というか、本来トラウマとは認識されないものなのだ)。ある種の物語作法のお手本のような構造なので、作家志望者などは分析的に読んでみると色々と収穫を得られるのではないかと思う。

 あと、すぶりの柔らかな色使いのイラストはたいへん魅力的。表紙の花梨の眼力は尋常ではないというか、手に取ったきっかけは表紙だったのだ。ひっくり返してあらすじを見てみたら上記のとおりなので、これはもう読むしかないと思って購入した次第である。現在、続刊が楽しみな作品のひとつだ。

ねぐせ 北白川たまこ(CV:洲崎綾)

TVアニメーション「たまこまーけっと」エンディングテーマ ねぐせ

TVアニメーション「たまこまーけっと」エンディングテーマ ねぐせ

 現在放映中のアニメ『たまこまーけっと』ED主題歌である。主演声優の洲崎綾は脇役をいくつかこなした程度の新人でありながら、主役のみならずOP・ED主題歌を担当する栄誉に浴したわけで、京アニパワーすげーと思わざるを得ない。いや、実際どれくらい売れるのか見てみないとわからないんだけど。

 さて、いかにも賑やかでポップだったOPとは違い、こちらはややアンニュイなアンビエント調テクノポップ。内容も、「これはもう、たまこに恋する目線という感覚」(月刊Newtype2013年3月号・山田尚子監督談)という映像美とそれに合わせた歌詞観に彩られている。

 「ドライヤーでなおらない機嫌」。「隙間を埋める和音と顔文字」。誰と何があったのだろうか。「愛は、おもちですか? 願い、おもちですか? 答えのない問いかけを飲み込む」。その相手は誰?「ああ、鼻歌まじりだね ヒトの気も知らないで」。どんな気持ちなんだろう。

 本編だけではなかなか見えてこない、飄々としたたまこの乙女チックな内面を垣間見ているようで、なんだか背徳的な気分になってくる。山田監督の持ち味である、ほんわかした雰囲気で描かれた彼女もごく普通の高校2年生、多感な年頃なのだ。

 作詞を担当した宮川弾はかつての渋谷系バンド、ラヴ・タンバリンズのキーボーディスト出身。作曲・編曲を務め、サウンドプロデュースも担当した山口優はメディアアート・教育番組・CMなど、幅広く手がけるミュージシャンである。

 また、c/wの『キミの魔法』も、「キミとならドキドキは特別な魔法さ ありふれた言葉には 思い出を重ねよう」「いつも一緒だし 慣れたと思ってたけど 「今はどうしてるだろう?」 ひとりごちた。」と、恋愛を容易に連想させる歌詞。果たして誰と誰の話なんだろうね?

 こちらは山口優主催のマニュアル・オブ・エラーズ・アーティスツ所属アーティスト、藤本功一の作詞・編曲である(作曲は山口担当)。

「ガールズ&パンツァー」キャラクターソング VOL.4 秋山優花里(CV.中上育実)

TVアニメ ガールズ&パンツァー キャラクターソング vol.4

TVアニメ ガールズ&パンツァー キャラクターソング vol.4

 ぼくが年末から愛してやまない『ガールズ&パンツァー』でも最も人気の高いキャラ、戦車オタク娘・秋山優花里(通称・秋山殿)のキャラクターソングCDである。ニコニコ動画に丸ごと上がっていたのを聴いて、これは買わねばと思って購入という、最近の典型的なアニソン消費者像(推定)のようなことをやらかした。

 1曲目は「戦車道恋唄!」。基本的には元気、かつちょっと変態的なビートを利かせたガールズロックなのだが、これがなかなか泣かせる歌詞なのだ。

 「戦車への愛いつでも、独立独歩でしたが できました! できました!できました! デサントできる仲間!!」

 ハイそこ、デサント仲間の余命は2週間とか言わない。ずっとぼっちだった女の子が、好きなことを一緒に語りあえて、力を合わせられる仲間ができて心から喜んでいるんだから。

 「こんなに嬉しいことは初めてです 戦車を好きで良かったです!」

 秋山殿、というか中上殿の元気いっぱいの声でこんな風にBメロを歌われたら、お兄さんなんだか鼻の奥がツンとしちゃうよ。

 そして最大のクライマックスは、間奏のあとにやってくる。

 「戦車を大好きな気持ちとおんなじくらい大好きな 友達、やっとできました…一番嬉しい出来事です!」

 涙腺崩壊である。戦車道への恋唄というより、本当の気持ちはここにあったのだ。なんて友達想いのいい子なんだろう。というか、友達ができて本当によかった。

 5話でみほたちが秋山殿の実家を訪れた際、友達と名乗ったみほに対して秋山殿の父親が大いに慌てて土下座までしていたが、その気持ちが痛いほどわかる。戦車にばかりうつつを抜かして、ずっと友達のいなかった娘の友達と称する同級生たちがいきなり4人もやってきたのだもの。そりゃあ嬉しいさ。観ているぼくだって嬉しかった。

 「無限軌道の環の様に手を繋いでこの道をただ どこまでも行きたいんです、戦車道邁進するのです!」

 どこまでも進んでほしい。きっと、5人なら「不整地も悪路も乗り越えて!」行けるはず。

 2曲目「1PLDK」は、秋山殿が戦車暮らしを勧めまくるコミカルな1曲。1曲目で感動しまくったあとは2曲目で脱力して笑おう。

初音ミク -Project DIVA- プレミアムフィギュア-extend- セガプライズ

 10月8日に催された同人誌即売会『Girls Love Festival 8』の前日、紙幣を崩して釣銭を作るため立ち寄った秋葉原のゲームセンター(注:ちゃんと銀行で平日に両替しましょう)で、わずか600円で入手。

 Amazonだと10月25日現在1,350円で出品されており、レビューでも1,000円でゲットした人から、3,500円突っこんでも取れなかったので通販で買ったという人まで様々。オークションでは2,000円前後で取引されているというから、ぼくはかなり運がよかったことになる。

 調べたところ、低価格帯のリアル頭身フィギュアとしてはこれが最新モデルらしい。11月末にははるかに精緻な造りのRACINGミクが7,000円程度で発売されるようだが、元々フィギュアに関しては物欲が薄いほうなので(なにしろ置き場所がない)、ぼくにはこれで十分である。では、全身くまなくねめ回すようにチェックしていこう。

 まず顔。KEIの特徴的な瞳をアニメ調のくっきりした塗り分けで再現・プリントしているため、見ようによっては瞳孔が開ききっているようでもあるが、十分に可愛らしいといえる範疇。

 顔全体の造形に関しても、最近流行の“ちょん”とした鼻や前歯を見せる笑みを違和感なく立体化できている。斜め下からアオリで見ると、湖川友謙が作画監督を務めた回の『メダロット』を髣髴とさせるような、破綻の少ない出来映え。逆説的に、湖川の立体感覚がデフォルメの利いたキャラにおいてもどれだけ優れていたかを実感させられる。

 髪はややマットな質感かつ大雑把な造りで、こればかりはクリアパーツなどを用いた高価格帯フィギュアに劣るが、後ろ髪の分け目などがきっちり再現されているあたりは好印象。髪飾りやヘッドフォンもけっこう細かく塗り分けられていて、上手い人がやればこれを200円で手に入れられるのかと思うと、むしろ贅沢に感じるほどだ。

 身体に移ろう。襟や肩回り、裾のヒラヒラは細部に至るまでよく作りこまれている。いつも思うが、ミクの大きく露出した肩や脇は実にエロい。以前クリプトン社の佐々木氏にインタビューした(諸般の事情から未公開)際、「脇の匂いがするようなキャラクターデザインを目指した」と仰っていたように記憶している。

 そして胸。胸……うん、なんかかなり顕著に先端が尖り気味なんですが何かあったんですか。ミクは貧乳が売りだった気がするが……まあ、いい。シャツの皺は、メタリックな質感とあいまってかなりリアル。絵描きの練習台にはもってこいだろう。スカートにも細かい電飾模様がペインティングされており、デザイナーの意気ごみを感じる。

 そして手足。手の爪ひとつひとつに緑色のマニキュアが塗られているのは驚いた。ここまで細かいとは。顔の横に添えている右手は中指と薬指をくっつけた状態で広げているという、これまた芸の細かい表現。アームカバーのYAMAHA DX-7を模したペインティングもくっきりと再現されており、ただただ感心する次第である。また、ブーツと一体化したオーバーニーソックスの上端はわずかに太ももの肉に食いこんでおり、なんとも生々しい。

 そして最後に、肝心要の部位――そう、パンツである。金田伊功の描く女の子のようにお尻を突きだし気味なポージングのおかげで、後ろから見るとパンツ丸見え状態なのだ。

 これがまた、ちゃんと皺やクロッチの縫い目が入っていたりと無駄に細かく、ぼかぁもう情熱をもてあますよ。ひっくり返してよーく覗きこんでみると、前に緑色のリボンが付いているのもわかるし。いやあ、眼福、眼福。

 というわけで、初音ミクのパンツ鑑賞代に600円は破格の値段である。皆さんもパンツ目指してレッツ・チャレンジ。