unreal arimura you - 非実在有村悠 -

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Secret Cluster(初回限定A) access DWDH 008/9/Darwin Records

Secret Cluster(初回限定盤A)

Secret Cluster(初回限定盤A)

 accessと出会ったのは、さていつごろだったか。たぶん2nd Album『ACCESS II』が出て間もないころ、すなわち93年末から94年初頭にかけてだったように思う。ハイトーンでクリアな声を聴かせる、イケメンだけどちょっとサル顔のヴォーカル担当・貴水博之と、シンセサイザーを駆使して高速デジタルビートを繰りだすボブカットの作曲担当・浅倉大介

 まあ、当時中2で、邦楽をアレコレ聴きはじめていたぼくはカッコいいと思ったね。近所のTSUTAYAから借りてきた『ACCESS II』の盤面にある“AXS”のロゴの上に紙を敷いてカッターでなぞり、ダビングしたカセットテープに貼りつけようとしたら見事にCDをダメにしてしまい、弁償するハメになったくらいには(アイタタ)。mp3どころか家庭用パソコンすら普及していなかった時代の話である。
 そんな時代を、彼らは駆け抜けていった。92年末のデビューから95年元旦の“沈黙”まで、およそ3年のあいだにシングル11枚・リミックスシングル4枚・アルバム3枚を次々とリリース。94年後半のシングル三部作では「純粋な感情」をテーマに同性愛ともとれる表現へのアプローチを試み、話題を振りまいた。そんな人気絶頂のさなかに突然“沈黙”に入り、貴水と浅倉はそれぞれソロ活動を開始。浅倉はT.M.Revolutionなどのプロデューサーとして成功を収め、自らも新たなユニット・Icemanの一員として活躍。ぼくが新月お茶の会に入り、ディープな浅倉ファン・月森竜先生の薫陶を受けたのはそんなころだった。

 世紀を超えて01年末、突如活動再開が告知される。そして翌年の再始動以降今日に至るまで、シングル9枚・ミニアルバム1枚・リミックスアルバム1枚・アルバム4枚・ベストアルバム1枚をリリースし、気がついてみれば結成20周年を迎えていた。……というわけで、ようやく今回レビューする7th Album『Secret Cluster』の話になる。

 長年浅倉のミックス・エンジニアを務めたフィル・カッフェルが引退し、浅倉自身がミキシングを手がけるようになって数年経つ。重低音を聴かせるフィルの音作りから、ひとつひとつの音色の粒が立った浅倉のソリッドな音作りに変わったのが大きな変化だろう。そして近年はギターを排除し、純粋なデジタルサウンドとなっている。今回のアルバムは、オープニングのインスト・ナンバー「vibe cluster」からブラック・ミュージックに接近したダンス・チューン「Let Me Go」、トランシーな「f☆R☆E☆e」まで個性的な楽曲が並び、コンセプチュアルな印象はない。

 今年発売された2枚のシングル曲もすべて収録されており、インストを除いたアルバムオリジナル曲は11曲中4曲にすぎない。しかし、“ポップ”を標榜してコンパクトにまとめ、いささか物足りない印象を受けた07年の前作『binary engine』よりは「accessらしさ」が前面に出ている。まあ、あの2人がやればすべてaccessらしいのだけど、本当は。

 アルバムの白眉は、いずれも20周年アンセムナンバーとなる「Beyond the Second-D.」と「20th Sincerely」だろう。前者は「出逢いからの夢を 夢のカタチに」、後者は「これから 未来に揺られて 僕等は 幸せになれる」と綴る。もちろん、ファンへ向けてのメッセージだ。最近のツアーは7公演程度、大きくてもホール規模になってしまったが、まだまだついていこうと根強いファンは思っているはずだ。ぼくだってそう思っている。

 ちなみに初回限定Aの2枚目は、07年から11年までリリースされた全シングル曲を収録している。昨年、東日本大震災後にリリースされた「Share The Love」はやはり名曲だ。