unreal arimura you - 非実在有村悠 -

オタク・サブカル系の書評やレビュー、ハウツー記事など。

THE iDOLM@STER CINDERELLA MASTER 012 多田李衣菜

THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 012 多田李衣菜

THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 012 多田李衣菜

やっべー。やべー。やべーよこれ。

かわいい。かわいいなんてもんじゃねえ。

このCDが何であるかを説明する必要がありそうだ。そこらの大学生からライトノベル作家まで巻き込んで一世を風靡している、モバゲー版アイドルマスターこと「アイドルマスター シンデレラガールズ」。

総勢150名以上のアイドルのカードを育成したり戦わせたりしつつ愛でるわけで、まあン十万単位のお金をガバガバつぎ込む廃課金兵なる連中が続出している有様だ。

そのアイドルたちが昨年から、5人ずつCDデビューするようになったのがこのCINDERELLA MASTERシリーズ。CD特典のカードがつくものだから、5枚ずつ2セット買うなんていうのがごく普通にまかり通りつつある。1枚2000円と安めとはいえ、ちょっと落ちつけ。

で、CINDERELLA MASTERシリーズ第3弾のひとつがこの多田李衣菜である。ロックなアイドルを目指す17歳の女子高生という設定で、演じるのは新人声優・青木瑠璃子。たいへん甘く可愛らしい、かつ元気な声質の持ち主で、今後の活躍が楽しみである。

楽曲「Twilight Sky」も、ギターロック系のアレンジがなされたアップテンポなチューン。そこに青木のややキャピキャピした元気な声が乗る。かわいい。

だが、青木、いや李衣菜の真のかわいさはそこにはないのだ。彼女には、ロック好き・ヘッドフォン好きを自称している割にはあまり……いやさっぱり詳しくないという「にわか」属性が、ゲーム中で徐々に付与されるようになった。特に、彼女と交流の深い木村夏樹(ガチのロッカー)の台詞や、新登場のカードでいじられはじめてからはにわかっぷりが加速し、ギターを買ったのに弾いたことがないとか、ジャンル名にすら疎いとかいったことが次々と明らかにされていくように。

そして、CINDERELLA MASTERの真骨頂であるラジオ番組仕立てのドラマパートでは、この「にわか」っぷりが全開である。ロックの中ではどんなジャンルが好きかとスタッフに訊かれ、「いいよねーUK(ロック)」→「あとはー、パンクとか、プ、プログレとかも」→「わ、わかってないなー(略)ロックをジャンルでカテゴライズすること自体ナンセンスっていうか」→「あーあーあー、聞こえなーい」。なんだこのにわかわいさ。

そう、彼女のかわいさを表す独特の単語として「にわかわいい」なるものが存在するのだ。何かといえばロックという単語を連発したり、それでもかわいい衣装に憧れたりする地が出てしまったりと、にわかわいさを全力で振りまいている。

たまらん。嫁に来てくれ。

一番ツボに入った演技は、アドリブ演技のコーナーで「ロックな路線で行くって言っている以上、こういうのは無理(略)私帰るよー」と言い出して、ノーリアクションだったのに対して「ほ、ほんとに帰っちゃうよー!」「ほんとに帰っちゃうよー!?(泣きそう)」と2回も叫び、引き止められると「そんなにやってほしいー? 仕方ないなぁ」と一転デレるあたり。

なんだこの生意気な小娘。結婚してくれ。

なんだかいろいろ脳内が漏れだしたレビューになってしまった。ともかく、りーなはかわいいということが主張したかったのである。

高嶋ひろみ「あさがおと加瀬さん。」は、ダダ甘の学園百合マンガ

あさがおと加瀬さん。 (ひらり、コミックス)

あさがおと加瀬さん。 (ひらり、コミックス)

主人公の山田は毎朝あさがおの世話をしている、“ドジでノロマなカメ”系の緑化委員。ある朝、花壇の前で隣のクラスのボーイッシュな陸上部員・加瀬と出会う。自分も朝練のあと時々水をやっていたという加瀬は、いきなり頭から水をかぶって「スゲーきもちいー 山田もすれば?」と笑いかける。

そこでキュン(死語)となってしまった山田は、加瀬のことが気になって仕方なくなり、彼女が自分のことを好きであってくれればいいのにと悶々。すると、夏休みも花壇の前で山田と会いたいと加瀬が言いだし、あとはひたすらいちゃラブ状態である。

最終的にはマラソン大会後、保健室での加瀬からの告白でこの巻は幕を閉じるのだが、そこへ至るまでの過程が実にピュアかつもどかしくて、読んでいるこっちが赤面しそうな勢い。元々女の子好きな加瀬は、天然で隙だらけな山田が袖をまくって白い肌アピールをしてくるのにドギマギしたり、マラソン大会用に選んであげた運動靴を、短いスカートのまま履きはじめる山田のパンツが見えそうでやっぱりドギマギしたり。

いっぽう山田も山田で、加瀬の大きな胸に目を奪われたり、加瀬の自転車の後ろに乗って帰ることになり、彼女の腰に腕を廻してドギマギしたり、運動靴選びの帰りに電車で同じつり革に手をかけてドギマギしたりと、もうほんっとに2人ともどピュア(女の子でも、同性のセックスアピールには胸が高鳴るものなのだろうか)。さすが、掲載誌『ひらり、』のキャッチコピーが「ピュア百合」なだけのことはある。

ちなみに本書は、新レーベル「ひらり、コミックス」創刊ラインナップのひとつ。個人的には、ドロドロしがちな『百合姫』掲載作品よりもこういうほんわか系のほうが好きだ。百合、万歳。とはいえ、実は言うほど百合作品に触れてきたわけではないのだけれど。

それにしても、繰り返しになるが山田も加瀬も本当にかわいくて、一途だ。絵的にかわいいのはもちろんだが、なんだろうな、年のせいか、我が子――とまではいかなくとも、年の離れた妹を見守るような気分にさせられる。加瀬の一挙一動に憧れる山田。一見男前なサバサバ系だけれど、わりと乙女な加瀬。山田は陸上部エースの加瀬をすごい、すごいと褒めそやし、どんくさい自分とは大違いだというのだが、加瀬は加瀬でずっと前から山田のことを見ていて、あさがおの世話なんて誰にでもできることではない、すごいと褒め称える。こういう、お互いに自分にないものを見出して憧憬の念を抱く描写は、ボーイ・ミーツ・ガールものにも通じるテンプレで、なるほどガール・ミーツ・ガールにもそのまま応用できるのだなと感じ入った。

絵といえば、『百合姫』系の端正で女性的な絵柄とは違って、時に大げさなくらい表情を崩す勢いのある絵が特徴的。ともすれば少年マンガ的と言えるかもしれない。ボーイッシュな加瀬を表現するにはもってこいだ。続きは今も『ひらり、』で連載中なので、続刊を気長に待ちたい。