unreal arimura you - 非実在有村悠 -

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『長門有希ちゃんの消失』はすべての長門スキーが読むべき

 賢明なる長門スキー諸兄諸姉におかれては、ぼくごときに勧められずともとうにご覧になっておいでだろうが、2009年から『ヤングエース』にて連載中の本作品は数ある『ハルヒ』関連コミカライズ・スピンオフ作品の中でも出色の出来である。

 漫画版作者はSDキャラの4コママンガ『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』を描いていたぷよ。その彼が、原作で最も人気が高く、アニメ映画化もされた4巻『涼宮ハルヒの消失』をベースに、「もしも長門有希が普通の内気な文芸部員だったら」というif設定でコマ割りマンガを描いているのだ。

 ここで出てくる長門は、そりゃあもうかわいい。眼鏡だし、ゲーム好きで夜中までプレイしては朝倉さんに叩き起こされる毎日だし、身の回りの世話はだいたい朝倉さんがやってくれて朝倉×長門厨のぼく大歓喜だし、意外と感情表現豊かでキョンに恋しているのがモロバレだし、貧乳だし。

 『消失』を読んだときに、一部の長門スキーが心の中で叫んだ「これや! これが見たかったんや!」が具現化しているといっても過言ではない。すばらしい。

 他のキャラクターも、ぷよナイズ(造語)されていて個性的だ。キョンは原作ほどの腹黒さもなくそれなりに長門を意識していて、朝倉はヤンデレることもなく「いつでもあなた(長門)の味方」であり、楽しいこと好きなところは変わらない鶴屋さんはみくるを巻きこんで文芸部によく押しかけてくる。

 そして何より光陽園に通う長髪のハルヒと付き人状態の古泉がいい。ハルヒはとあるきっかけでキョンや長門と知り合い、2人は彼女のサンタ探しに付き合わされることになる。要するに、原作ハルヒのエキセントリックさはそのままなのだ。なお重要なのは、ハルヒが中学時代、校庭に忍び込んで宇宙人へのメッセージを描き、それをキョンが手伝ったという原作の設定がここでも生かされている点。

 ただし、そのとき手伝わされたキョンはハルヒと同い年の中学1年生。こういう形で過去に2人は出会っているのである。そして、そのときに交わされた会話――「宇宙人っていると思う?」と、高校1年で再会し、川でカッパ探しを始めたときの会話――「カッパっていると思う?」に対するキョンの答えが同じ――「いるんじゃねーの」なんだよ! バン!(机を叩く音)これでハルヒはキョンに対してフラグが立ってしまったらしい。やったぜキョンハル。ぼくは重度のカプ厨なので、立ったフラグには大はしゃぎで飛びつきます。

 そして3巻のヴァレンタインデーで繰り広げられる、長門とハルヒの女の対決。「彼のことが好きなの?」「そうね 嫌いじゃないわ で? あたしの気持ちを知ってあなたはどうするつもり?」2人ともカッコいい! このとき、長門をたきつけるだけたきつけて何のフォローもしなかった自分を責める朝倉さんもいい。本当に、友達想いないい子なんだね。

 その後も季節は流れ、新年会だの進級だの夏の海だの、文芸部員+αたちは順調に季節ごとのイベントをこなしていく。その間に進展するようでしない、それでも少しずつ縮まっていく、キョンと長門の距離。ラ、ラブコメ好きにはたまんねぇ。あーそうそう、夏休みとかに見られる長門の私服もまた清楚でいいんですよ。水着も(いろいろな意味で)控えめでさ。

 まーともかく、「長門有希ちゃん」が大変かわいらしいマンガなので、長門を嫁とする者はあまねく読むべき。あと、佐々木も出てくるよ!