unreal arimura you - 非実在有村悠 -

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『めくりめくる』(拓 GUMCOMICS Plus)は叙情感溢れる倉敷青春ストーリー

めくりめくる 1巻 (ガムコミックスプラス)

めくりめくる 1巻 (ガムコミックスプラス)

 秋葉原にある『COMIC ZIN』では、なんというか、「COMIC ZIN系」とでも呼びたくなるような一群のマンガがよくプッシュされているのを目にする。どういうカテゴライズなのか自分でもよくわかっていないが、ちょっとマイナーな雑誌やジャンルの、いかにも通好みそうな作品を1階の平台で取り上げる感じといえば少しは伝わるだろうか。

 この『めくりめくる』も、そんななかのひとつだった。試し読みしてみて、春の海にやってきた男女の高校生がテンション上がって飛び込んじゃうシーンでパンツが見えたので買った(下衆)。で、その後読み進めていくと、ぼくの期待したのとはだいぶ違うけど、良質の作品であることが明らかになったのである。

 舞台は岡山県倉敷市。歴史的建造物の多く残る、情緒溢れる町だ。行ったことないけど。そこを舞台にして、基本的に2~3人の女子高生(時折男子が混じることもある)のちょっとした触れあいやいさかい、その後の仲直りといった日常が、オムニバス形式で丁寧に描かれる。

 すごいのは、みんなシンプルな線で描かれた似たような顔立ち(たかみち系といってもいいだろう)なのにしっかり描きわけが出来ていること。コミティアとかで実力派サークルとして名を馳せていそうな感じだ(なお、作者の情報を何も知らないまま作品だけを読んでいるので、もし本当にそうだった場合はご容赦を)。

 親友の一生懸命走る姿を撮りたい。一緒に進級したい。中学時代仲良かった子と、また仲良くなりたい。好きな男子に勇気出して告白したい。そんな、一見なんでもないような女の子たちの日常が、いろいろと余韻を感じさせるような全体的に白めのの絵で綴られる。ほのかに百合臭が漂うところも個人的には好印象。

 そして、合間合間に(というか、道を歩いているシーンの背景はほとんどそうなんだが)ちょいちょい顔を出す、倉敷の町並みも美しい。この作者、本当に絵が上手い。倉敷市が観光キャンペーンに正式採用したのもわかる。思わず行ってみたくなる絵だ。

 こういう、表紙(試し読み?)買いしてよかったと思わされる作品にたまに出会うから、ぼくはマンガに関しては単行本派なのである。まあ、雑誌を買う金もスペースもないというのが大きな理由なんだが……。

めくりめくる 2巻 (ガムコミックスプラス)

めくりめくる 2巻 (ガムコミックスプラス)

めくりめくる 3巻 (ガムコミックスプラス)

めくりめくる 3巻 (ガムコミックスプラス)

めくりめくる 4巻 (ガムコミックスプラス)

めくりめくる 4巻 (ガムコミックスプラス)